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Divya Agarwal            2017年1月10日

 

航空宇宙&防衛セクターは、現在大きな波を迎えています。機体の老朽化が懸念される中、飛行機利用の需要は劇的に増加。供給側でもOEM企業は常に技術革新をうたい、効率向上、競争力の維持、収益拡大、より高い顧客価値の創出を目指して運用面での最適化を進めています。結果として、今起こっているのが航空機の各プロセスと計装の急速な「デジタル化」です。

 

より洗練された航空機を目指して

今日、すべての航空機には高い技術を結集した計器が装備され、その搭載センサー数は1000以上。毎日テラバイト単位のデータが生成されています。このデータはフライトのパフォーマンスや運用環境を評価する上での貴重な情報源となります。航空会社ではこのデータを利用して機体の構造健全性診断や予防保全などに関するソリューションを実施しており、これが機体の寿命延長、交換頻度の減少、品質目標の遵守、さらには技術者数の削減などさまざまな部分で役立っています。

 

技術が発展するに伴って、より多くのセンサーが搭載された新しい航空機が開発され、やがては関係者全員が航空データをリアルタイムで見ることができる、などのより高度なデータ通信が可能となることでしょう。たとえば、乗客1,000名を収容可能な新モデルの超大型旅客機では、各翼に1万個ものセンサーが搭載されています。これらのセンサーだけで1日に約7.5テラバイトものデータ量というから驚きです。[1] この大量のデータを適切に分析できれば、何百万ドルという燃料費を削減し、機体の安全性を飛躍的に向上させることが可能となります。またこのデータと適切な技術を組み合わせれば、部品の故障などの状況把握、機体の設計変更や生産計画、サプライチェーンの運用、機体のメンテナンスに関わる重要な情報を得ることもできるため、技術者サイドにおいても大きなメリットだといえます。

 

シームレスなデータ統合&データフローの必要性

上述のようなメリットはあれど、その実現には膨大な量のデータを複数企業のネットワーク内にうまく統合し、シームレスなデータフローを確立する必要があります。ここでも「プロセスをデジタル化し、メリットを最適化」するために、従来の機械的なプロセスに代わる新技術を導入することとなるでしょう。たとえば、モデル・ベース・エンタープライズ(MBE)や産業分野向けのモノのインターネットなどを、オートメーション、ビッグデータ分析、クラウドコンピューティング、デジタルマニュファクチャリングなどの技術と組み合わせるのも良い例です。これらの技術なら、機体のライフサイクルにおける全ステージからデータを収集し、双方向フィードバックでインテリジェントなシステムを構築できます。技術者側の負担も飛躍的に減らすことができるため一石二鳥です。

 

デジタル化がゲームを変える

現場データおよびサービスデータを統合設計システムに組み入れることで、設計プロセスの最初からメンテナンスのタイミングを把握できます。また設計システムの自動化により、OEM企業側でシステムパフォーマンスおよびコストをより迅速・正確に予測することが可能となり、システム全体の最適化にもつながります。

 

航空宇宙&防衛分野ではMBEの導入も進んでおり、たとえば同分野ではCADシステムで開発した3Dコンテンツを直接利用して新製品を製造したり、検証、プロセス計画、サービス情報、調達、品質管理、検査などの下流工程全体を近代化したりといった取り組みが一般的となっており、MBE潮流の先駆けとして注目されています。

 

デジタル化トレンドの中では、予測分析(プレディクティブ・アナリティクス)も注目される技術のひとつです。予測分析はさまざまな統計モデルやデータマイニング技術、人工知能(AI)、機械学習を使用してデータを解析する手法で、たとえば機体の翼内センサーで収集したお天気データを解析し、今後のフライト状況を予測するなどの形で活用できます。

 

また、デジタルサプライチェーン管理プラットフォームも、リアルタイムに更新されるデータに基づいて生産計画やラインバランシング、サプライヤー管理、トリアージ管理などを行うのに役立ちます。

 

デジタル技術は航空業界のバリューチェーンを根本から変えゆく存在です。デジタルの力は、今後はプロセスの最適化、品質水準、製品化までの時間短縮、コスト削減、顧客体験の向上などさまざまな点で生かされていくことでしょう。

 

いかがでしたか? バリューチェーンのデジタル化について、ご自身の体験やご意見がございましたらぜひお聞かせください。

 

[1] http://www.datasciencecentral.com/profiles/blogs/that-s-data-science-airbus-puts-10-000-sensors-in-every-single