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Sherry C Kunjachan  2017年11月14日

 

拡張現実(AR)が今、世界の自動車工学分野で徐々に注目を集めています。ある研究によると、車載AR市場は2020年まで毎年約18%の成長率で拡大するだろうといわれています。では、「拡張現実」とは一体何なのか。今回はその詳細を紐解いていきたいと思います。

 

基本的に、拡張現実とは実在する風景にコンピューターで生成した視覚情報を重ねて、目の前の世界を「バーチャルに拡張」するという技術を指します。ARの未来として期待されるユースケースの中でも、最も盛り上がっているのが車載インフォテインメント機器分野です。現代の車載ARインフォテインメントシステムは既存のHUDシステムの進化系で、ドライバーのわき見運転を防止する目的で主に開発が進められています。ほとんどの自動車メーカーは拡張現実のテクノロジーを用いて、より安全性に優れた製品の開発を目指しています。

 

車載ARインフォテインメントシステムではスピード、目的地までの所要時間、ルート、メディア情報、車両の状態などをフロントガラスに表示できるため、ドライバーが前方に集中して運転を続ける確率が上がります。最新の天気・交通情報通知、道路状況の視覚表示、インタラクティブマップを利用した夜間運転時のサポートなども可能です。さらにGPS機能およびセンサーと統合することで周辺地域のリアルタイムな情報や交通標識、他の車のスピードや近接度なども認識でき、交通密度が高い都市地域では非常に重宝すると考えられています。ARは同じく次世代カーとして注目を浴びる自律走行車の設計・開発にも大きな影響を与えており、将来的には車体のモビリティと搭載機能を追求した新しいモデルが登場することになるでしょう。

 

2017年に米国で行われたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)でも、自動車機器メーカー3社がドライバー、同乗者、そして歩行者の安全を飛躍的に向上させる車載ARインフォテインメントシステムを展示したことが大きな話題となりました。色分けされた画像を表示してブレーキのタイミングを知らせたり、周囲にいる歩行者を検知したりと、ARのコンセプトを活用することでこれからの車の未来と安全を守ることができます。(現在、メーカー側ではプロジェクション技術を搭載したモデルを開発中とのこと)

 

高性能インフォテインメントシステムへの需要の高まりと、政府による安全への取り組み強化を受けて、多くの自動車メーカーがARインフォテインメントシステムの研究開発に投資をはじめています。自動車へのAR搭載がこのまま急速に進化すれば、優れたアルゴリズムを設計してさまざまな状況に応じた高精度の仮想コンテンツを作成していく必要があります。ARディスプレイにはコンピューティング処理によって道路の幅や配置をキャプチャし、解釈するサブシステムが多数必要です。また、AR技術を活用した車監視システムを開発する場合も、車のボディ全体にかなりの数のセンサーを設置しなければなりません。そのため、自動車OEMメーカーにとってはまず、ARインフォテインメントシステムの専門知識をもつパートナー選びが大切となってきます。ARを正しく使って「必要な時に、必要な情報を、正しいコンテキストで伝える」ことが、車の安全な未来をつくっていくからです。